韓国のK-POP最大手事務所のHYBEの子会社レーベル・ADOR(アドア)所属の大人気5人組ガールズグループ・NewJeans(ニュージーンズ)のハニ(HANNI)さん(20)が、2024年10月15日に、韓国国会の環境労働委員会、経済社会労働委員会などの国政監査に参考人として出席し、HYBE社内でのいじめ問題について証言し、涙を見せました。
一体何があったのでしょう。また、証言がどんな影響を及ぼすでしょうか?
そもそもNewJeansとはどんなループ?
NewJeansは、2022年7月22日にデビュー曲「Attention」のミュージックビデオを公開して世に出た、5人組ガールズグループです。
メンバー5人のうち、3人は韓国人で、ハニを含む2人がオーストラリア出身です。ハニは両親がベトナム人で、オーストラリア国籍のメンバーです。
NewJeansのプロデューサーは、SMエンターテインメントのクリエイティブ・ディレクターだったミン・ヒジン氏で、2024年8月に解任されるまでADOR代表取締役でした。
NewJeansは、1990年代から2000年代の洋楽ポップスのノスタルジックな雰囲気と今風の要素と組合せたサウンドと、Y2K(2000年頃)を思わせるファッションが特徴です。
それまでK-POPのガールズグループの主流だった、女性が憧れる強い女性のガールクラッシュのコンセプトとは一線を画した、自然体・等身大の女の子のコンセプトのグループです。
その音楽性と雰囲気に、1990年代から2000年代の洋楽で青春を過ごした日本の40~50代くらいの男性がハマり、K-POPには興味がないがNewJeansだけは好きなその年代の日本人男性ファンが「NewJeansおじさん」と呼ばれるようになりました。
NewJeansが初出演した2023年8月の大型音楽フェス「SUMMER SONIC 2023」には、多数の「NewJeansおじさん」の姿がありました。
2023年7月21日に発売した2ndミニアルバム「Get Up」は、米ビルボードのメイン・アルバム・チャートのBillboard 200で1位を獲得しました。NewJeansは若くして大成功しました。
ちなみに、私はNewJeansのライトなファンですので、完全中立ではなく、NewJeans寄りの書き方になることを、ご了承ください。
NewJeansはなぜHYBEのお家騒動の渦中のグループになった?
NewJeansが所属するADORの親会社のHYBEは2024年4月22日に突然、ADORのミン・ヒジン代表らADOR経営陣を、HYBEからの独立を画策し、そのための機密情報を不正にHYBEから取得したとして、背任の疑いで監査に着手した、と発表しました。
これにより、その後現在(2024年10月17日)に至るHYBEの泥沼お家騒動が表面化しました。
ミン・ヒジン代表は直ちに、公式声明でHYBEに反論しました。HYBE傘下の別のレーベル・BELIFT LABから2024年3月25日にデビューしたガールズグループ・ILLIT(アイリット)がNewJeansのコピーであると社内で問題提起したところ、突然HYBEが監査に入って自分を解雇しようとしている、との主張でした。
その後ミン・ヒジン氏は2024年4月25日に記者会見を開いて、HYBEの創業者・筆頭株主で実質的な最高意思決定者であるパン・シヒョク議長(会長)と2021年夏頃から、NewJeansとLE SSERAFIMのデビューをめぐって不仲になったことを明かしました。
ミン・ヒジン氏は、NewJeansがHYBE初のガールズグループとしてデビューするはずだったのに、HYBEは先にLE SSERAFIMをHYBE初のガールズグループとしてデビューさせ、自分を裏切ったと主張しました。
これにHYBEは反論しました。HYBEによると、NewJeansのデビュー組の各分野の責任者がミン・ヒジン氏の意向を受けてミン・ヒジン氏に変わり、デビュー候補の練習生がHYBE傘下のSOURCE MUSICからミン・ヒジン氏が代表の新レーベル・ADORに移管することになり、NewJeansのデビュー準備が遅れたと主張しました。
2024年8月27日に、HYBEはミン・ヒジンADOR代表取締役を電撃解任し、代表権のない社内取締役に降格した上で、NewJeansのプロデュースを続けさせることを決定しました。
しかし、ミン・ヒジン氏はその契約内容に不満があるとして、現在の契約が満了する11月1日以降の契約の締結を拒んでいます。
2024年9月11日には、NewJeansのメンバー5人が、YouTubeで緊急生配信を行って、9月25日までにミン・ヒジン氏のADOR代表復帰を要求しましたが、HYBEは拒否しました。
NewJeansハニが国会で証言したHYBE社内でのいじめとは?
上記の9月11日のNewJeansのYouTube生配信の中で、メンバーのハニが、HYBE社屋内のヘアメイクのフロアで、別のグループと遭遇して挨拶した際に、そのグループのマネージャーがメンバーに、ハニを無視するよう指示した、と明かしていました。
ハニによると、別グループのメンバーがヘアメイクの部屋に入る前に、廊下にいたハニに挨拶をしたものの、その後部屋から出て来た際に、そのグループのマネージャーがハニに聞こえるように、そのグループのメンバーに無視するよう指示した、とのことでした。
その問題をハニがキム・ジュヨン新ADOR代表に相談したところ、証拠がない、とうやむやにされてしまったといいます。
その後、10月15日の国会の場でもハニが説明しましたが、問題部分の直前の防犯カメラ映像はあったのに、肝心の問題部分の映像だけなかった、とのことでした。
なぜNewJeansの社内いじめ問題が国会で取り上げられた?→HYBE騒動の本質的な問題
この挨拶無視問題に激怒した一部のNewJeansのファンが、政府に訴えたことで、9月15日の韓国国会での国政監査に、ハニが参考人として、キム・ジュヨンADOR新代表兼HYBE最高人事責任者が社内いじめの対応の証人として、出席するように要請されました。
社内での些細な挨拶無視問題がわざわざ国会の場で取り上げられた、というレベルの話ではありません。大手芸能事務所の経営・勤務環境についての問題意識が、議員にはあったと思われます。
今や財閥企業並みに影響力のある巨大エンタメ企業となったHYBEでの、社内で長きにわたる根深いNewJeansの孤立状態を象徴する問題、とみなされたことで、国会でも取り上げられたとみられます。
実際、国会の場でハニは、「会社は私たちのことが嫌い」との見方を訴え、HYBE社内のNewJeansへの無視が1度や2度の話ではない、根深いものであったと示唆しました。
ハニは以前からメディアも報じていた、パン・シヒョク議長がデビューしたてのNewJeansメンバーたちの挨拶を無視した件について、実名は出さずに、「ある偉い方」が挨拶を一度も返してくれなかった、と話しました(Kstyleの2024年10月15日18:19配信の記事)。会社トップが新人社員の挨拶を無視しても不思議はない、という考え方は、芸能事務所の人気新人アーティスト場合は、当てはまりません。他ならぬ事務所トップがゴーサインを出して、大大的に売り出したわけですから。
しかも、HYBEのトップのパン・シヒョク議長は、NewJeans以外の新人ガールズグループ(LE SSERAFIMやKATSEYE)とは、仲良く一緒に写真を撮っています。
中小企業や同族企業では、トップの好き嫌いに、社員は誰も逆らえません。しかし、世界的巨大企業に成長した上場企業・HYBEの運営が、中小同族会社並みのトップの好き嫌いに左右されていて、いいのでしょうか。
ちなみに、10月15日の韓国国会での国政監査の場では、議員がHYBEの2022年の社員過労死隠蔽疑惑を暴露しました。その件は労災として届けられていませんでした。
証人として出席したキム・ジュヨンHYBE最高人事責任者は、過労死ではなく持病による死亡だったと述べました。
これは、単にHYBEがブラック企業か否かという問題にとどめず、芸能事務所の構造的問題である過重労働にメスを入れたい議員が、取り上げたのかもしれません。
ハニの国会証言の影響は?
テレビ生中継・YouTube世界配信された国政監査でのやりとりで、NewJeansへの長きにわたる社内いじめと社員過労死疑惑が注目を浴びたことで、大企業・HYBEへの逆風、NewJeansへの同情の世論が増したと思われます。
次は、NewJeansのコピー問題で注目が集まっているガールズグループ・ILLITの所属事務所・BELIFT LABのトップが、国会で証言します。率直に言って、このトップのこれまでの対応は、ILLITのプラスにほとんどなっておらず、むしろ墓穴を掘りがちです。
HYBEのお家騒動がどう着地していくのか、今後も見守っていきたいと思います。